日記320

・さて、いよいよ旅行の話…の前に。

・最近、ということでもなく、この夏くらいからハマっている音楽があるので、それについて書き記しておきたいんですね。書き記させてください

・ご存じの方からすると、「何をいまさら」ということになるでしょうが、Nujabesという日本人トラックメーカーの音楽です。HIPHOPと言われてラジカセと不良しか思い浮かばない方にとっては、HIPHOPの概念そのものがひっくり返るようなピースフルな曲が魅力的。

・彼がどういった生い立ち/経歴/どんな音楽を作ってきたか/世間にどんな影響を与えたか、については、然るべきというか、詳しい人が書いている記事なり何なりをご参照ください。ぼくはそのへんは全然知らない

・彼の作品をそれなりにたくさん聞いてきて、特に自分が好きな曲を二つ、ご紹介しておきます。Luv(sic)pt.2 ft.Shing02と、Luv(sic)pt.3 ft.Shing02であります。どちらも、NujabesのメロウなビートにShing02のクリアなラップが心地良い曲です。

・まず、pt3の方から、これがぼくが初めて聞いた彼の曲です。ぼくが初めにヤラれたリリックは、以下の部分。

Like a movie that you can't predict

Like a book that you can't resist

・Aメロっていうんですか?それの冒頭です。まず、韻の踏み方が素敵なわけですけど、これ、発想としては漢詩に似てると思うんです。節尾では、物理的に韻を踏んで(pred”ict”と、res”ist”)いて、節中では名詞(movieとbook)が対応しているし、それを受けた動詞も当然対応しているばかりか、第一節と第二節で微妙にニュアンスの違いを持たせている

・そして、意味も素敵です。つまり、この詩を書いた人は、少なくとも、「先が読めなくてハラハラしてしまう/続きがどうしても気になったり、何度も読んだりしてしまう」という映画/読書体験を持っている人です。これだけ物語や情報が氾濫している時代に、こういう経験は砂漠で飲む水のように貴重です。

・ぼくもいつも、こういう体験を探して本屋を徘徊しています(映画も、数はあまり観ませんが、本当に面白いものを観たいなと常に思っている)。だから、こういう歌詞を書けてしまう人のことは一辺に信用してしまうんですね。

・先に歌詞の話だけしてしまうと、先ほど、第一節と第二節で微妙にニュアンスが違うと書きましたが、じゃあもし、movieに対してresistが、bookに対してpredictが対応していたらどうだろう、と考えるわけです。

・そうすると、どちらも悪くはないんですが、特にmovieに対してresistできないというのは、ちょっと俗っぽいというか、「物語ジャンキー」みたいなニュアンスが出てしまう。bookに対するpredictは、まあ、あえて揚げ足をとると、読書特有の没入感みたいなものに欠ける感じが出ます。つまり、本来は没頭しているはずの読書から、少し俯瞰して、物語の先を読んでやろう、という冷静な目線が復活してしまう。

・あ、思ったより長くなった。次のポストに行きます