日記472

・さて、理由はよく分かりませんが、「信頼」について最近よく調べています。

・いや、理由はあるんですよ。例えば最近、日本政府がスタートアップ五か年計画というのを出していて、その内容を調べてるんですけど、けっこう盛りだくさんで大事な計画なんですよ。でも、国民の多くはこんな計画のことなんか気にも留めず、岸田政権の支持率は下がり続けている。これって、政策の内容うんぬんより、日本においてそもそも政府や公的機関、企業に対する信頼が低いからじゃないかと考えたんです。いきなりわき道にそれますが、以下のような形で、企業の不祥事についての論文もざっと調べました。

cir.nii.ac.jp

・それで、信頼について、今まで調べて分かったことを書きます。問題意識が、政府や公的機関への信頼について調べるところから始まっているので、政治学的なアプローチが初めに来ます。

・はじめは、シカゴ大学名誉教授の政治学者、David Eastonからです。彼は信頼について、specific support と diffuse supportという、二つの信頼の仕方の峻別を提案しました。その内容についてはここでは詳しくは触れません。

・それから、あまり詳しく調べてませんが、Mark Warren という政治学者が、信頼について以下のように書いています。

 “trust involves a judgment […] to accept vulnerability to the potential will of others by granting them discretionary power over some good. When one trusts, one accepts some amount of risk for potential harm in exchange for the benefits for cooperation”(1999)

・そもそも、信頼というのは、学際的な研究のテーマになりえます。例えばこんなリサーチ論文があります。

https://www.j.u-tokyo.ac.jp/coelaw/COESOFTLAW-2004-8.pdf

・公的機関への信頼についてのサーベイがないかどうかを調べています。ヨーロッパだと、Eurobarometer や European Values Survey などがあるのですが、日本での代表的なデータは以下になるようです。

ssjda.iss.u-tokyo.ac.jp

・このデータを使うと、例えばこんな調査ができます。P22を見てください。

https://institute.dentsu.com/wp-content/uploads/2021/06/%E3%80%8C%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%BE%A1%E5%80%A4%E8%A6%B3%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%80%8D1990%E3%80%9C2020%E5%B9%B4%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%99%82%E7%B3%BB%E5%88%97%E5%88%86%E6%9E%90%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88.pdf

・ただ、このデータ、ヨーロッパと違って、申請しないと中身見れないんですよ。ミクロデータみたいなんでしょうがないんですけど。

・それで、このデータ申請に対して利用可否を審査している審査員(池田謙一氏)について少し調べました。

www.ikeken-lab.jp

thinktank.php.co.jp

・今のところ、最も興味深いのは以下の論文です。

「行政に対する信頼の構造」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/nenpouseijigaku/61/1/61_1_11/_pdf

・そのほか、学者としては、デュルケームと、パットナムに興味を持っています。デュルケームの入門書は、以下を買おうと思っています。パットナムは、社会共通資本のアイディアに興味があります。

www.gakubunsha.com

・それで、個人的なリサーチのテーマは、中央銀行に対する信頼です。この問題は、たぶん今後の中銀をめぐる話題に、トピカルではなく常に深く絡んでくると思います。CBDCなんか言うまでもなく、貨幣というものがそもそも信頼に裏打ちされて通用しているものですし、デジタルバンクランの時代に信頼は大きなキーワードたり得ます。