日記70

・実はいま、けっこう遣る瀨ない気分です。

・なので、相場が落ち着いてるこのタイミングで、二つ、大事なことを書いときます。

・一つ目は、「返報性」の話。ウィルキンソンの研究が有名です。

・簡単に言うと、吸血コウモリの習性の話。彼らはただチューチューと血を吸うだけじゃなくて、実は血を吸える時に吸っておいて、体内に蓄えておくことができるんですね。

・そんで、その蓄えをあとから一人でシメシメと楽しむこともできるんですけど、他人に、というか他コウモリに、分け与えることもできるんです。

・んで。まあ彼らもいつでも血を吸えるわけではないので、この機能を利用して、言わば知り合いのコウモリと助け合って生きてくわけです。

・ここで問題ですけど、たとえば、ある日、たっぷりと血を蓄えたコウモリちゃんの目の前に、お腹を空かせて死にそうなコウモリが二匹、まあコウモリA、コウモリBとしますか、とにかくそいつらが現れたとします。このとき、お腹一杯コウモリちゃんは、どっちに血をあげると思いますか

・実はコウモリちゃんは、「過去、誰に血をもらったか」というのを覚えているんです。それだけでなく、過去に血をもらった相手に、お返しに血をあげることが、研究の結果分かっているんです。つまり、この場合、もしもAとB、どちらかがコウモリちゃんに過去に血をあげたことがあったら、コウモリちゃんは迷わずそっちに血をあげるんです。

・これを「返報性」というんですね。なんでこんなことを書いたのかっつーと、人間社会には、この返報性を軽んじている人が意外と多いからです

・社会的な言葉で言えば、これは義理人情といってもいいし、そこまで格式張らなくても、まあ誰かに何かしてもらったらお礼を言うとか、相手に誉めてもらったら逆に相手のいいところを探して誉めるとか、そういうコミュニケーション上の努力を、人はとかくサボってしまいがちなんです。でも、これって、実は動物的なレベルで、根本的に大事なことなんで、生きていく上では決して、軽んじてはならないのです

・朝礼の時の校長先生みたいな話をしてしまった

・よく、自己啓発本やなんかに、「成功する人は何かにつけて御礼を言う」みたいなこと書いてますけど、そんなヌルい話じゃなくて、生存本能レベルで大事なことなんすよ、返報性って。

・さて。二つ目は、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」の話。人は、自分が分からないものを、恐怖として捉えるという話です。

・これだけ科学技術が発展したいま、まあ幽霊か枯れ葉かの区別は容易につくことが多くなってきましたが、それでも分からないことは何かというと、それは人の心です

・人間は、目の前にいる人が何を考えているのか、直接知る手段を持ってないんです。目の前の相手が、まるで何も考えていないパッパラパー脳みそお花畑状態なのか、はたまた自分のことを今すぐに絞め殺そうとしているのか、全く分からない。これは、恐怖であり、ものっそいストレスフルです

・そこで、人間は、というか動物全般ですけど、「観察」という素晴らしい機能を用いて、相手がどういう状態なのか、何を考えているのか、探るわけです。このとき、人間は言葉を使ってかなり高度なコミュニケーションができますので、主に相手が発する言葉を手がかりに、相手の意図を探り、ご機嫌をうかがい、また自分の方からもメッセージを発するのですね

・ところが、これまた多くの人が、言語を用いたコミュニケーションをサボっている。自分の気持ちが、言葉にせずとも伝わるだろうと思ってるわけです。

・人の気持ち、考えというのは、言葉にしない限り全くといっていいほど、伝わりません。「言葉にしなくても伝わる気持ち...」だとか「言わなくても察してほしい」なんていうのは、とんでもナイーブ&ロマンチックな考えです。一般的に人が想像するよりも、自分の気持ち、考えは相手に伝わっていない。こうして人は知らず知らずに、相手にストレス、恐怖を与え、人間関係に支障をきたしていくのです

・まとめですけど、「返報性」に基づく行動も、自分の考えの言語化も、円滑な社会生活を営む上では必須のマナーです。それら抜きには、社会は相互に信頼し合えず、不協和音を生んでいきます。

・各個人は、互いにコミュニケーションをとる努力を惜しんではならんのです。そうしないと、自分がうまいこと生きていけないだけでなくて、他人に恐怖を与えてしまうんです。最近は、テキストメッセージのやり取りやSNSが発達しましたが、自分の考えや気持ちを適切に公表する場として、これらは驚くほど機能していない。ツールは進化しましたが、人間がより怠惰になってるんです。

・今回のコロナに絡む一連の社会問題も、こうした相互不信頼の上に成り立っているとしか思えません。

・なーんでこんなことを突然書いたかというと、今ファミレスにいて、隣のおじさんが、という話を書き始めてると止まらないのでやめる。

・終わり。唐突～～