日記449

・日記を書いている場合ではないんです。なんやかんやあって、フランス語の試験が7月初になったので、そのための対策やら何やらをしなくてはならない。普段のフランス語のクラスもDELFB2レベルになったので、要求されるボキャブラリーやアウトプットのレベルがこれまでとは比較にならないくらい高く、授業をこなすので精一杯です。というか、残念ながら、現状、授業のレベルについていくことができていない

・しかしながら、そうした状況であればこそ、日記を書くんです。試験とか、自分の将来のキャリアとか、そういう、本当はこの世界に存在しないものに惑わされて脳のメモリを食われていると、勉強も捗らないという考え方を、私は支持します

・試験とか自分の将来のキャリアとかが、実はこの世には存在しないのであ~るとか書くと、ついに頭をやられてしまったのかと思われるかもしれないので一応補記しておきますけど、私がここで言いたいのはアレです、いま/この瞬間を大事にしましょうという簡単なお話です

・それについては散々、このブログでも書いてきたので改めて繰り返し申し上げることはしませんが、やっぱりここ最近、目の前の人生、目の前の生活、目の前の人間から目をそらして、試験のこととか将来の人間関係とか、気を抜くとそんなことばっかり考えているので、せめてブログを書く時間ができたときくらいは、それをやめましょうということですね

・んで。もう少し正確に申し上げるとですね、こういうかたちでブログに自分の思考を走り書いていく行為そのものが、自分という存在を見つめ直す行為であるということ、これもこれまで繰り返し申し上げてきました。いや、もしかしたらそんなに繰り返し書いてはいないかもしれないけど、意識的/無意識的に、ブログを書くことの効能の一つとして、そうしたものを実感した場面は何度もありました

・そしてブログだけでなく、小説を書くことにもそうした効能があることを認めるべきです。小説を書くことは自分自身を見つめ直すことだと、これもこれまでも申し上げてきましたが、まさにそれが必要な局面に来ている

・これまでに繰り返し申し上げてきたことを確認するだけの日記と化している

・今年、小説を書くにあたって大事なことは、人間と向き合いましょうということです。プロットを作るとかアイディアを整理するとか、これまで小説を書くにあたってやってきた作業も、一度分解してしまおうと思います。朝の静かな時間に、紙一枚だけでもって自分自身と向き合いながら、登場人物と対話し、登場人物の物語るままに、ストーリーを書き留めていこうと思います

・それから、主人公の生きる世界について、調べものもしながら書いてみようと思います。これまでは、ほとんど自分の知っている世界についてしか小説を書いてこなかったわけですが、小説を書くことを通じて、自分自身を深く掘り下げていくことには、自己を少しずつ拡張することも含まれていると、最近思うからです

・そういう意味では、フランス語という新しい言語の習得も、とりもなおさず自己を拡張する行為でしょう。それは単純に、アクセスできる情報が拡張されるとかそういう意味合いではないんですね。もしも言語習得の目的が、アクセス可能な情報を増やすというだけであれば、それらは翻訳その他の技術の発達によって代替されてしまうでしょうから。

・そうではなくて、母語以外の言語の習得は、例えば自分が語りたいことをより鮮明にしてくれるでしょうし、自分がこれまで体験してこなかった文化圏での振る舞いの習得を否応なく迫ることでもあります。そうした中では、人は自分自身の存在をもう一度見つめ直し、私はいかなる存在か、目新しい社会の中でいかに振る舞うことができる存在なのかということを、再発見することになるでしょう

・美術館に訪れるというのも、自分にとっては同じ意味を持ちます。特に現代アートは分かりやすい例ですが、作者が展開する世界に一度飛び込んでみることによって、自分という存在を、これまで知らなかったコンテクストの中に置き直してみるのです。優れた美術作品、ありきたりな形容をすれば「自分に響く作品」の前で、わたしは知らず知らずのうちに自分を再発見していると思います。それは主に、「自分は、こんなコンテクストの中でも生きていくことができるのか」という自らのしたたかさの再発見であり、そうした体験をするたびごとに、自分という存在についてのスケッチに、一本ずつ線を引き加えることができたような感覚を覚えます

・こうした理解のもとで、わたしは小説を書くことを通じて何をしているのかと改めて問われれば、それはまず、とりもなおさず自分という存在の理解深耕ですし、読者に対しての問いかけでもあります。ですから、なにはなくとも登場人物と真摯に向き合い、彼(ら)が有するリアルな世界認識を理解をする努力を怠らず、それによって作品世界というコンテクストを構築する必要があります。それをもって読者のレジリエンシーに問いかけ、その心理に一本の線を引くことを試みるのが、今年以降の目標になります