日記40

・絶対に今書くことではないけど、「本を読むこと」について書いときます。ほっとくと、いつまでたっても書かないし

・というか、平日に触れられるテーマが為替しかないのが悲しい。いまはお仕事で手いっぱいの時期なんでしょうがないんですけど

・しょうがないよね

・ぼくは本を読むことがたぶん好きなんですけど、その理由はよくわかりません。そもそも、人間に読書という行為は不要だと思ってます。本が読めなくて死んでしまう人はいないので…。人生が退屈になる、または生きることが超非効率になるってことはありますけど

・もうちょいちゃんと言うと、文学作品を読む理由は本質的にはないはずです。誰かの前で見栄を張りたいとか、教養があるように思われたいとか、文学作品に対して個人的な見解を持つことを社会的に求められているとか、そういう場合を除けば(こういう場合は少なからずある)、生活の実用に何の役にも立たない文学作品を読む必要は、まるでない。

・さらにちゃんと言うと、娯楽小説を読むことには、それなりに理由があります。だって、娯楽だから。煙草を嗜むように、酒を味わうように、音楽を聴くように、娯楽として小説を読むことは、人生の大いなる歓びの一つじゃないですか。ぼく煙草吸わないですけど。それを取り上げて、なぜこんなことをするのかと問われても、それが娯楽であり、人生の潤滑油であるから、それ以上の答えはありませんし、他の答えを期待するのは、野暮。

・yabo

・でも、純文学は違うじゃないですか。娯楽小説との対比で見たときに、純文学作品は、取り立てて明るくもおかしくもなく、ハラハラすることもなく、涙を誘うわけでもない。あのー、そうした特徴を持つ純文学作品が多くあることは認めますけど、そのような特徴を持っている必然性は、ない。

 ・本来、マーケットレポートを読んだりとか、英語の勉強をするはずの時間にくだらない読書論をコネている、この背徳感がたまらない

・今日めちゃくちゃ天気良い~~~~~花粉が元気に飛んでそ~~~~~~

・そんで、じゃあなんで人は背中を丸めてごそごそと純文学なんて読むんですかと言われたら、それは一つには、「身につまされる」からだと思います。

・三つの作品を例を挙げましょう。1.「ささやかだけれど、役に立つこと」("A small good thing")レイモンド・カーヴァー、2.「金の無心」("The loan")バーナード・マラマッド、3.「勝手に生きろ!」("FACTOTUM")チャールズ・ブコウスキー

・日本の作品が一つもない。えー、何でもいいんですけど、4.「コンビニ人間村田沙耶香

・共通するのは、「貧乏」です。現代日本は経済的に豊かなので、4.の主人公は厳密に貧乏はではないけど、いつまでたってもコンビニバイトという設定は、まあ豊かではない、不安定な収入からくる精神的な不安を扱っていますんで、広義の貧乏でいいでしょう

・たとえば3.ですけど、内容だけを申し上げると、第二次大戦後間もないアメリカで、主人公のチナスキーが酒に溺れながら転々と職を探し続け、女性と出会ったり、だらしなく別れたり、すぐに仕事をクビになったりしながら、とにかくふらふらとアメリカ中をさまよい続けるという、まあどうしようもない、とっても素敵な物語です。

・一つのポイントは、ふらふらと、時に泥まみれになりながらあちこち渡り歩くチナスキーを見て、だらしない奴だと思いながらも、「まあ、こういう奴、たまにいるよな」とか、場合によっては、「おれじゃん」とか、つまり、チナスキーという人間に、周りの人や自分を投影してしまうことですね。

・その投影ができてしまうと、貧乏という万人に普遍の毒みたいなものが、読んでる人間の身体にじわっと巡り始める。今生きている人生にリアリティをもって迫ってくる。読んでいて、「うわ、金がないって嫌だな」とか、「こういうこと、昔あったな」とかですね、よく言われることではありますけど、小説を読むことを通じて他人の人生、つまりあり得たかもしれない自分の人生について、想いを巡らせることになります。

・そうであればこそ、純文学ではバラバラ死体が次々と発見されたり、宇宙人が攻めてくるといったことは、あんまりない。作品で描かれる他人の人生というものが、自分の人生と「重なる」感覚が大事なんで、非日常的なハラハラドキドキイベントは起きないことが多い。

・読むことを通じて、自分の人生に重なる、言い方を変えれば「身につまされる」体験ができるのが、純文学の一つの特徴であり、自分ならざる他人の人生を生きてみることができる、しかもそれを自分の体験として消化できるというのは、人間の本質的な欲求の一つを刺激することだと思うのです。

・以下、1.、2.と4.についても言いたいことは同様。

・だから、文学作品を高尚なものとして有難がっている人間はもれなくアレです。物事の本質を全く理解していない。だって、本来、自分と重ね合わせて楽しむはずのものを自分から遠ざけてるんですもん。そういう人は神棚に本を飾っておきなさ~~~いって坂口安吾が言ってました。うふ

・今日は横浜美術館に行きます。